私が体験しました!
みどりのふるさと協力隊:あっちゃん
一年間農業ボランティアとして日本各地に赴任する「みどりの協力隊」として2019年度に大川村に赴任しました。
村の方々と関わりながら、畑や田んぼのお手伝いや大川村特産の土佐はちきん地鶏や大川黒牛の飼育、植生調査のフィールドワークや染め物などの山暮らしの知恵など、この一年間いろんなことを体験しました!
大川村には現在、土佐はちきん地鶏の育成棟2か所、そのうち1か所に育雛棟、そして食鳥処理場があります。
大川村の土佐はちきん地鶏の強みは何といっても親に卵を産ませるところからヒナを孵し育て、処理場で捌くところまで村内で一貫生産ができること!
今回ははちきん地鶏の卵から処理、そしておいしくいただくまでの全てを体験させてもらいました。
種鶏から育雛まで
土佐はちきん地鶏は、実は「土佐はちきん地鶏」から産まれるわけではありません。
はちきん地鶏のお母さんは白色プリマスロック、お父さんはクキンシャモです。
やわらかくて臭みのない食べやすい白色プリマスロックと、しっかりした歯ごたえでうまみの強いクキンシャモ。
この2種から産まれる鶏が「土佐はちきん地鶏」です。
味は濃いけど柔らかく、臭みがなくてぷりぷりジューシーな歯ごたえの土佐はちきん地鶏の秘密がココにあります!
はちきん地鶏は卵からはじまる
はちきん地鶏のお母さんの白色プリマスロックは県外からやってきます。
まず初めに真っ暗な光を遮った部屋へ入ります。
鶏が一生に産む卵の数はほぼ決まっているので、一番良い卵を産めるように、暗い部屋で卵を産ませず待ちます。
(排卵鶏は生後120日くらいから卵を産みますが、ベストな卵を産んでもらうため150日くらいから産ませるように調整します。)
真っ暗な部屋の中でもエサを食べ水を飲むので驚きです。
鳥目はどこへやら!?
お父さんのクキンシャモは光の入る鶏舎でお母さんたちを待っています。
エサやりが始まるのは8時半から。
鶏は一般的に朝8時から16時頃が一番卵をよく産むそうですが、朝行くとすでにいっぱい産んでくれている日と、あまりない日とまちまちです。
鶏舎の中の採卵箱に産んでくれた卵は、外側の通路からすぐ取れるようになっています。
集めた卵は選別し、40~42℃の卵とほぼ同じ温度のお湯で洗い、消毒液のプールの中で消毒します。
それを乾燥させて、温度と湿度を管理できる部屋の中で管理し、ふ卵器へ入れます。
ふ卵器は母親代わりなので、卵の温度を調整し、自動でゴトゴトと卵をひっくり返します。
本来のお母さん鶏は、卵を1日4回転がして、卵の中でヒナや胚がカラにくっつかないようにしているのだそうです。
そして待つこと21日。
ヒナが産まれてきます!
この日が一番大事な日!ヒナが産まれた!
ヒナの餌付けの日は、従業員総出で作業をします。
1、体重40g以上のものを飼育します。
体重が40g以下のものが目標の3㎏/羽に育つのかどうかは、まだ試験中で現在は40g以上のヒナを選んで育てています。
小さくて弱々しいものは病気などのリスクも大きくなるそうです。
2、オス・メスをわける
鶏を飼育するとき、オスとメスで部屋を分けています。
なぜなら肉質が違うため、注文の時にオスかメスかを選別する必要がありますし、出荷日もオスは80日、メスは90日と違うので分けて育てているのです。
選別はヒナの段階で羽を見たらわかります。(オスはキレイにそろった羽、メスは使ったあとのバドミントンの羽のようにボサボサ…といいますが、素人の私が見ても、正直はっきりとはわかりません…)
プロ(鑑定士)は肛門で見分けます。
実は雌雄鑑定士という仕事もあります。
鑑定士養成機関はまだ日本でたった1つだけ!
養成講座を受けられるのも満25歳以下の高卒以上で視力が1.0以上。
さらに試験を合格した人のみ。
養成講座を受講し、2~3年の研修を積んで鑑別率が99%以上にならないといけません。
とても狭き門ですが、興味がある方はお若いうちにチャレンジしてみてくださいね。
3、ワクチンを注射する
ワクチンには何種類かあります。
人間と同じで鶏もワクチンがあります。
良く教えていただいたのはマレック病という病気です。
マレック病は翼のマヒ、脚のマヒなどをおこします。
この病気のワクチンを初生ヒナの時に必ず接種します。
4、育雛棟まで運びます
育雛棟はすぐお隣の建物です。
5、ボイラーをつけた暖かい囲いの中で初めての水とえさを与えます。
そして30日後、育成棟へ運ばれていくのです。
元気いっぱい!育成期
大川村には育成棟が2か所にあります。
そのうちの1か所は地区の名前はあってももう誰も住んでいない地区。
つまり、唯一の住民が「土佐はちきん地鶏」たちなんです!
ここに運ばれてきたヒナたちはオスは80日、メスは90日でそれぞれ別に出荷します。
オス・メス平均1羽3㎏を目指します。
一番大事なごはんとお水!
水はとても大切です。
水が止まるとえさの食いつきが悪くなったり、夏場の体温が下げられず弱ってしまいます。
朝夕で必ず水が給水器にあるか確認します。
大川村にはいわゆる「水道」がないので、土佐はちきん地鶏が飲んでいる水もお山の湧き水です。
天然のミネラルウォーターを飲んで育つなんて、都会から見たら贅沢な話ですね。
(ちなみに人間も同じ水源の水を飲んでいます^^;)
ごはんは1日1回。
30日齢で約86g/羽、80日齢で約170g/羽 のエサを食べています。
毎日ちゃんとごはんに寄ってくるか?食べているかー?とちゃんと確認します。
元気のない子は部屋の隅でうずくまっていることが多いです。
ごはんをたべて水を飲んだらまったり&お遊びTIME
座って羽をバタつかせ、砂をまきあげて砂浴びします。
砂浴びは人間でいうとお風呂と一緒。
羽についた寄生虫を落とします。
なので、足元の大地の環境がとても大切です!
頭を低く下げて、お尻を振りながら鶏舎を走り回ります。
一羽が走り出すと他の子も走り出します!
実はめちゃくちゃ走るのが早くて、時速14㎞もでるのだとか。
頭を低く下げておしりを振りながら鶏舎を走り回ります。
一羽走ると他の子たちも走り出します。
かと思えばストレッチも。
体が凝るのか、羽を下に、片足を後ろによーく伸ばしてます。
おなかも満たされたくさん遊んだら寝ます。
瞼は下から上に閉じるんです!
そしてなんといびきをかく子も…!
知ってる!?はちきん地鶏1:若いトリはまだ「コケコッコー!」とは鳴かないゾ
にわとりといえばあの「コケコッコー!」というけたたましい鳴き声ですよね。
でもどんなに大きくなっても、出荷前まで基本ピヨピヨ鳴いてるんです。
よく聞く「コケコッコー!」は、土佐はちきん地鶏の場合は生後65日くらいを過ぎたあたりから練習を始めます。
基本オスだけで、最初のうちは「コケコ―……?」と途中でへたばっています。
とてもカワイイです。
他にも「チーチョチョ」とか「コッコッコォッコォ…」、驚いたときは「カアッ!」、警戒すると「コーカッ!カッ!カッ!カッ!」と鳴いたり。 鳴き方で鶏たちの様子がわかります。
知ってる!?はちきん地鶏2:はちきん地鶏はくちばしを切らない
鶏は一生をつついて終わるほど「つつく」習性があります。
常にツンツンコンコンくちばしでつついています。
ただ、ストレスがたまると仲間のお尻までつついて血まみれにすることも…。
一般の養鶏場では、これを防ぐため「デビーク」という作業をします。
産まれて5~7日目のヒナのくちばしをデビーカーという機会で3分の1ほど切ったあと、焼いて止血します。
嘴を切ると羽の掃除をしたり、羽根に油塗り広げたり、微細な穀粒を拾えなくなったり、土をつついて砂浴び出来なくなってしまいます。
たまに本気でつつかれると痛いですが、鶏にとっては手であったりコミュニケーションもとるための大切なくちばし。
デビークはしたくないなあと思いました。
(ちなみに土佐はちきん地鶏はデビークしていません。)
知ってる!?はちきん地鶏3:鶏はとっても臆病なのです
仲間の奇声にも驚いて警戒するほど、鶏たちはとーっても臆病者。
一度びっくりすると、一斉に安全な方へとあつまり、そのせいで圧迫死する子もいます。
鶏小屋に入るときは、できるだけそっと、やさしく入ってあまり大きな音をたてないでね!
知ってる!?はちきん地鶏4:そもそも地鶏って何?
【地鶏の定義】
在来種由来の血が50%以上で出生証明できること(品質表示にも基準があります)、孵化日から75日以上飼育していること、生まれて28日目から平飼いしていること。
【平飼いの定義】
ケージ飼いに対して、鶏が鶏舎内を自由に動き回れるように飼う方法で、1㎡あたり10羽以下という密度条件を満たしているもの。
ちなみに土佐はちきん地鶏は前に書いたように出生証明された白色プリマスロックのお母さんとクキンシャモのお父さんから産まれ、オスが80日、メスが90日飼育されます。
「はちきん」の名前通り「8」にこだわっていて、「80」日以上飼育し、1㎡あたり「8」羽に限定しています!
そして生まれたすぐから平飼いです。
いよいよ出荷当日
毎日もりもり食べて、目標通りに大きくなり、生後約80日目で1回目の出荷日がやってきます。
捌いたときおなかの中からエサが出ると衛生上の問題もあり、出荷当日は出荷4時間前にエサを断ちます。
ただ、早く断ちすぎると状況によってはストレスからか仲間同士でつつきあい、尻が傷つき、肉に傷がつくと淘汰に回さなければならず、その下限がとても難しいところです。
また、目標通り大きくならなかった鶏たちも生産性が合わないため淘汰しますが、土佐はちきん地鶏は飼育の96%以上の高い出荷率で出荷されているそうです。
日々、鶏たちの様子をちゃんと見て、無事に育て上げ、淘汰や病死、突然死を減らすことが鶏の命を無駄にしないことなのだと感じました。
出荷用コンテナで鶏舎を仕切り、ベニヤ板でコンテナの内側へそっと鶏を追いやり、手づかみで一羽一羽入れていきます。
ひとつのコンテナにオスは5羽、メスは6羽入れるため、15~20㎏になるコンテナをトラックに積み込むことになり、とても重労働です。
鶏の体温も約40℃と高く、冬でもヤッケの下に着こみすぎると汗だくになります。
いつもと違う様子に鶏もおびえますが、スタッフの方が見事なほどにさっとつかまえ、すっとコンテナの中に入れていくので、あっという間に終わります。
私がやろうとすると鶏がバタついてなかなかコンテナに入ってくれず。
熟練の技に感動しました。
大川バルで土佐はちきん地鶏の丸焼きをしました
大川村では、むらのえき「結いの里」で数か月に一度、地域おこし協力隊やみどりの協力隊を中心に、食べ放題イベント「大川バル」を開催しています。
毎回60~80名(人口の2割近く!)の人が集まる、大川村でも人気のイベントです。
クリスマス近くに開催した大川村バルで、私が育てた土佐はちきん地鶏の丸焼きを出すことになりました。
自分の手で大切に育てた鶏たちを自分の手で塩をもみこんでじっくり焼いて…。
自分で最後まで(肉のカットはしていませんが)心を込めて鶏を料理し、食べていただくことができ、とても幸せでした。
本当にありがとうございました。