緑茶のうちほんの数%しか生産されていない「幻」と言われる「釜炒り茶」。
大川村で昔々から伝統的に作られている特産品の「玉緑茶」もこの「釜炒り茶」です。
日本のほとんどの緑茶と違い、澄んだ小金色の水色に、渋みがなく香ばしいすっきりした味わい。
手間と伝統の技に育まれた、花開くように香るお茶。
そんな玉緑茶の秘密に迫ります。
手摘みで集めるお茶の葉
よく日の当たる斜面がたくさんあり、雨が多く水はけのよい土地柄の大川村は、お茶づくりには最適の環境。
毎年5月には村中が手摘みの茶摘み作業で忙しくなります。
山奥の大川村では昔はあまり物流がさかんではありませんでしたから、自分たちの飲む分のお茶は自分たちで作るのが当たり前でした。
なのでどこのおうちも、学校にもお茶畑があり、手摘みでお茶の新芽を摘んで釜で炒ってもんで玉緑茶を作っていました。
現在でもその伝統は生きていて、それぞれのおうちでお茶畑と手摘み・手作り釜炒り茶の技術が受け継がれています。
むらのえき「結いの里」などに並ぶ玉緑茶は、そんなそれぞれの「おうちのお茶」のおすそわけなのです。
釜で炒る「殺青」が味の決め手
現在、「緑茶」といえば蒸し製の玉露や煎茶、抹茶や番茶などが主流。
釜炒り茶は全体の3%ほど、九州と四国のごく一部で作られるのみでとても希少なお茶です。
この釜炒りで「殺青」することでお茶の青臭さを飛ばし、香ばしい香りを引き立たせ、葉の組織をほぐして味が出るようにしています。
同時に発酵を止めることで「緑茶」になります。
【それぞれの家のこだわり】
昔は手で熱い釜の中を攪拌していたこの作業。
現在は専用の鉄釜で炒っていますが、それでもまだまだ手作業の部分は多いです。
生のままではただ葉っぱの匂いしかしない茶葉ですが、炒ると香ばしいお茶の香りがたち始めます。
おおむね九州の釜炒り茶などと比べ、少し低めの温度でじっくり炒るのが大川村の玉緑茶の特徴。
しかしその微妙な匙加減は各家々ごとに受け継いできたこだわりです。
二度炒りしたり、釜や道具ひとつひとつのクセがあったり。
温度や時間、炒り回数や手順などひとつひとつにこだわって「うちの一番の味」を追求した玉緑茶。
そのためお茶の味が家ごとに違うので、飲み比べてみて一番のお気に入りを探すのも楽しみの一つです。
それぞれのお茶はむらのえき「結いの里」で購入できます。
玉緑茶は烏龍茶の親戚?【お茶の種類】
同じ茶葉でも殺青や発酵の有無、製法などでいろいろな種類に変わる「お茶」。
一般的に有名な玉露や煎茶、番茶やお抹茶なども、すべて「蒸し」製法の緑茶です。
茶葉の色もお茶にしたときにも、緑の色がはっきり出るのが特徴。
一方大川村の玉緑茶は緑茶ではありますが、釜で炒る工程で作るため、烏龍茶にも近い種類のお茶です。
そのため大川村の玉緑茶のお茶の色は、蒸し茶のような緑色ではなく、少し烏龍茶よりの黄金色。
じっくりと炒るため香ばしい香りが強く、苦みがほとんどありません。
揉みと乾燥
水分や成分が均一に全体にいきわたるよう、ていねいに葉を揉み、乾燥させます。
【揉む】
機械が補助するとはいえ、葉が均等になるよう付きっきりで世話を要する作業です。
高きびを束ねた手作りのほうきや、シュロほうきを使って、茶葉が外にこぼれないよう、均一になるように葉を内側へ寄せながら揉んでいきます。
揉み時間や圧によっても、出来上がりが変わってくるので、この揉み時間や圧も、各家のこだわりポイントです。
【乾燥】
玉緑茶は炒るときから揉み、乾燥まで、すべての工程を攪拌しながら行います。
乾燥もドラムで大きく回しながら、熱風をあててじっくりと水分を飛ばします。
玉緑茶は圧縮など「伸ばす」作業をしないため、葉は小さく縮れて丸まり、勾玉のような形に。
この勾玉状になった形が、「玉緑茶」の名前の由来です。
お湯を注ぐと花ひらく勾玉「大川村玉緑茶」の特徴
勾玉状に丸まった茶葉。それが、「玉」緑茶の名前の由来です。
また、ここまで一度も「刻む」という作業をしていないため、お湯を注げば小さくなっていた勾玉がふわっと開き、香りとともに元の葉の姿を現すのも玉緑茶の特徴。
細かく刻まれていないため苦みが出づらく、さわやかな風味で子供から大人まで飲みやすいお茶です。
【釜炒り茶の歴史】
14世紀の明代に中国に広まったこの「釜炒り茶」の技法ですが、歴史は古く8世紀の唐の時代に書かれた世界最古の茶書、陸羽の「茶経」でも紹介されている歴史ある製茶法です。
もともと日本でも盛んに作られていましたが、明治以降の茶葉の輸出・大量生産化に伴い、機械化が容易な蒸し製法が一般的になっていきました。
飲茶の本場、中国では現在でもこの「釜炒り茶」が主流だそう。
【特徴】
香ばしく、苦みが少なく透きとおった釜炒り茶の味わいはどんな食事にもよく合い、味や香りの邪魔をしないので、日常に気軽に飲むお茶として親しまれています。
大川村でもそれは同じで、ていねいに手作りされた玉緑茶は大人から子供まで親しまれています。
当たり前にいつもそこにある、毎日に自然に寄り添う、そんなちょっと贅沢なお山の日常茶です。
【アンチエイジングに効く!】
釜炒り茶は煎茶や玉露と比べてカテキンが多く含まれていることもわかっています。
(煎茶13~14%、玉露が10~11%に対して、釜炒り茶は14~18%ととびぬけて高い)
カテキンは抗酸化力が強く、血圧やコレステロールの低下、アンチエイジングに効果があることがわかっていますね。
緑茶のアンチエイジング作用は有名ですが、その中でも釜炒り茶のカテキン含有量は多く、若々しさを保つにはもってこいです
このカテキンを守っていつも新鮮なお茶を飲むためにも、お茶の葉は密閉して冷暗所で保管するのがおすすめ。
とはいえ、炒ってある釜炒り茶は、蒸し製のお茶より乾燥度が高く、劣化しにくいという特徴も。
油断はできませんが、長期保存にも耐えやすいお茶なのです。
みんなのおすすめの飲み方
大川村の玉緑茶づくりの達人たちにおすすめの飲み方を聞いてみました!
大川村玉緑茶審査会4年連続1位!の川上さんご夫妻のオススメ
大川村さくら祭を主催している川上さんはお茶作りも達人級。
農薬や化学肥料を使わず、カヤを敷きこんで雑草を防ぐなど、茶葉からこだわって作っています。
毎年5月にはお茶作りのワークショップも開催しています。
そんな川上さんのおすすめはスタンダードな温かいお茶!①沸かしたお湯を湯のみに入れ、70~80度まで冷ます。
②急須に大さじ2杯の茶葉を入れ、湯飲みのお湯を急須に注ぐ。
③しばらく待って、湯飲みに交互に注ぐ。午後のほっと息つくときにぴったりの、やさしくさわやかなお味です。
村の生き字引おばあちゃん!和田愛野さんのオススメ
愛野さんは大川村名物「かりんとう」をはじめ、「あけぼのみそ」や謝肉祭、「ふるさとまつり」でおなじみのとうふやこんにゃくなど、さまざまな物産を生み出しているスーパーおばあちゃん!
そんな愛野さんのおすすめは、カップでそのまま玉緑茶!①カップに茶葉を入れる。
②お湯を注ぐ。
③葉が開くまで待つ。茶葉がそのままなので、最も香りを楽しめる飲み方です!
Q、茶葉が口に入らないの…?
A、慣れたらよけれる!食べても死なん!苦みのほとんどない釜炒り玉緑茶だからできることかも!?
ちなみにでぃぐ!的なおすすめは、ボトルにそのまま玉緑茶!
玉緑茶は水出しでも美味しく飲める緑茶です。
玉緑茶の茶葉と大川の水(大川村は水のほぼすべてをお山の湧き水で賄っています!)をボトルに入れて、そのまま持って家を出れば、飲みたくなるころには冷たいおいしいお茶ができています!
苦みが出づらいので、茶葉は入れっぱなしでOK。
飲み口が狭くなっているタイプのボトルや、ストッパーがついているボトルならより良いです。
クセのない玉緑茶は楽しみ方もいろいろ!
ぜひお気に入りの玉緑茶と飲み方を見つけてみてくださいね。